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カテゴリ:法律のお話し
  • 個人再生において住宅を残せるか否か
    [ 2012-04-20 18:03 ]
  • 三和ファイナンス(SFコーポレーション)に借入がある方
    [ 2012-03-16 10:12 ]
  • いかに回収するか
    [ 2011-12-13 17:10 ]
  • 17条書面と特段の事情についての最高裁判決
    [ 2011-12-02 00:00 ]
  • 長年放置しているといろいろ消えちゃいます
    [ 2011-11-30 14:28 ]
  • 自己破産・個人再生における自動車の取扱い
    [ 2011-11-22 17:27 ]
  • 過払金と税金
    [ 2011-10-27 14:13 ]
  • ヤミ金の話
    [ 2011-10-21 16:02 ]
  • プロミス-クラヴィス問題の最高裁判決
    [ 2011-10-03 11:35 ]
  • 三和ファイナンスが破産しました
    [ 2011-08-29 15:06 ]
個人再生において住宅を残せるか否か
最近,個人再生に関するお問い合わせが多いため,個人再生のことについて書いてみたいと思います。

個人再生の特徴としては下記の点があげられます。

(1)マイホームを残すことができる場合がある。
(2)借入の原因を問わない。
(3)財産を換価(没収)されることがない(ただし,ローン物件は除く)。
(4)最低100万円は支払わなければならないため,安定した収入が必要。


これらの条件のうち,(1)のために個人再生をご希望されるという方が多いため,今日はこちらに絞って記載してみます。

マイホームを残すためには,下記の条件が必要です。

①個人再生の分割弁済+住宅ローンの返済ができること

マイホームを残す場合,個人再生において減額してもらえるのは,住宅ローン以外の借入のみであり,住宅ローンはそのまま支払っていただかなければなりません。したがって,それを賄えるだけの収入があることが必要です。

②マイホームが住宅ローン以外に担保になっていないこと

住宅金融支援機構や銀行や信用金庫など,一般的な金融機関の住宅ローンを組んで購入された場合,まず間違いなくマイホームが担保に入っている(抵当権が設定されている)と思います。マイホームが担保に入っていたとしても,これらの金融機関だけであればまったくもって問題ありません。また,いわゆる「諸費用ローン」など,同じ金融機関から2口の融資を受け,2つの抵当権が設定されていることがありますが,このような場合でも問題ありません。

ところが,住宅ローンとは関係なく,アイフルやCFJなど,消費者金融が根抵当権を設定している場合があります。アイフルやCFJの根抵当権は住宅ローンではありませんので,このままではマイホームを残すことはできません

もっとも,個人再生の申し立てを行うまでに,アイフル等の根抵当権が消えていれば良いため,親族の方等にアイフル等の債務を肩代わりしていただき担保を消した後に個人再生の申し立てを行えば,①の条件は満たすことになります。なお,この場合に,親族等が代わって支払う分には構いませんが,ご自身の財産からアイフル等に返済してしまうと,偏頗弁済となってしまい,間違いなく後々問題になりますので,絶対にそのようなことはしないでください。


③住宅ローンの残債と住宅の価値を比べたときに,住宅ローンの残債が大きいもしくは同じくらいであること

これは,上記(4)とも関係があるのですが,個人再生において支払うべき弁済額は,最低100万円ですが,それ以上に財産がある場合は,そのその財産の額分を支払うこととなっています。
そして,住宅の価値が住宅ローンの残債よりも価値が高い場合には,差額については財産となるため,その分を支払わなければならず,現実的には個人再生ができないことになります。
文字だけだと分かりづらいので具体的な金額を記載します。なお,説明の都合上,住宅以外の大きな財産は無いものとします。

(例1)
住宅ローン以外の総債務額→500万円
住宅ローンの残債→1500万円
マイホームの価値→1000万円

上記の場合だと,住宅ローンが1500万円残っているのに対し,マイホームの価値は1000万円しかありませんので,実質的にはマイホームに財産としての価値はありません。とすると,この場合,個人再生によってご返済いただく金額は,500万円の20%である100万円となり,これに加えてこれまで通り住宅ローンをご返済いただければマイホームを残しつつ他の借入について大幅に圧縮することができます。

(例2)

住宅ローン以外の総債務額→500万円
住宅ローンの残債→1000万円
マイホームの価値→1500万円

上記の場合だと,住宅ローンが1000万円残っているのに対し,マイホームの価値は1500万円もありますので,実質的にはマイホームの価値は差し引き500万円となります。すると,この場合,個人再生によってご返済いただく金額は,500万円とこれまで通りの住宅ローンとなるため,個人再生を行うメリットがほとんどありません(強いてメリットをあげれば,強制的に無利息での36回分割になることくらいでしょうか・・・)。

したがって,何か変な感じがしますが,マイホームの価値が無いほどマイホームを残しやすく,逆にマイホームの価値があるほどマイホームは残しにくいということになります。

あくまでざっくりとした計算ですが,頭金を1割程入れて35年ローンで購入された場合,マイホームの価値が住宅ローンの残債よりも高くなるまでには,15年~20年以上はかかると思います。もちろん,戸建てかマンションかによって異なりますし,人気のある場所かどうか等によって異なるため,最終的には不動産業者さんの査定書を取ってから判断することになります。



以上から,「個人再生=家が残せる!」とお考えの方が多いのですが,実際にはすべての方が残せるわけではありませんので,マイホームを残すために個人再生をお考えの方は,上記についてじっくりご検討いただければと思います。
by 8732ki | 2012-04-20 18:03 | 法律のお話し
三和ファイナンス(SFコーポレーション)に借入がある方
現在,三和ファイナンス(現SFコーポレーション,以下「三和」とします。)は破産手続を進めておりますが,三和に対して借入が残っている方は,三和の破産管財人宛に毎月ご返済されていると思います。
破産手続開始決定(PDF)

ところが,お客さんに対する債権を第三者に売却すべく手続を進めているらしく,4月末頃に債権譲渡が予定されているそうです。

法的には,債権譲渡の通知が届いた以降は新しい債権者に対して返済しないと返済したことにはならないため,最悪の場は二重に支払わなければならなくなってしまいます。ただし,従前の口座は順次閉鎖していくとのことですので,おそらく大丈夫だと思いますが,そうならないよう郵便物をしっかりご確認ください(債権譲渡通知は必ず書面できます)。

なお,三和のリンク先及び文面をコピペしておきますのでご確認ください。

リンク先

現在、破産管財人において、破産財団に帰属している貸付債権の売却手続等を進めております。

債権売却手続等に伴い、ご契約者様から現在ご入金いただいている銀行口座につきましては、順次閉鎖いたします。

債権譲渡の対象となるご契約者様には、新たなご入金先となる譲受人名義の銀行口座等をご案内する譲渡通知を発送させていただく予定ですので、その後のご入金は同書記載の指定口座へお願いいたします。

債権譲渡の対象となっていないご契約者様におきましては、今後も破産管財人に対してご返済いただくことになります。現在ご入金いただいている口座が閉鎖した後のお振込先につきましては、下記カスタマーセンターまでお問い合わせいただきますよう、お願い申し上げます。

現時点では、本年4月末ころまでに、債権譲渡の通知の発送を行う予定ですので、ご契約者様が債権譲渡の対象となっているかどうかは、譲渡通知の有無によってご確認いただけますよう、お願い申し上げます。

その他、ご不明な点につきましては、下記カスタマーセンターまでご連絡いただきますようお願い申し上げます。
(電話連絡先)
株式会社SFコーポレーション
破産管財人執務室 新横浜カスタマーセンター
TEL:045-477-3710
受付時間:10 時~16 時(土日祝日を除く)
by 8732ki | 2012-03-16 10:12 | 法律のお話し
いかに回収するか
先日,フロックスの記事でも書きましたが,現在は判決を取っても素直に支払ってくる業者は少ないため,強制執行をして回収を図ることが多々あります。

そもそも判決(勝訴判決)というものは,その判決書をどこかの銀行に持っていけば現金に換えてもらえるものではなく,単に「(法の手続に乗せた上で)強制的に取り立ててもいいよ」というお墨付きを国からもらうに過ぎません。したがって,何年もかけてやっとのことで勝訴判決を取ったとしても,相手にお金がなければ,いくら強制的に回収しようにも無い袖は振れませんのでその判決書は単なる紙切れにしかならないこととなります。
もっとも,破産等をしていない限り,まったくお金がないという個人や会社はなかなかいません。個人であれば毎月入ってくる給料を押さえることで回収することができますし,会社であれば,今はなくても将来入金されるであろう口座をタイミング良く押さえることで回収することだってできます。

ただ,いつ入金があるのかわからないため,この「タイミング良く」というのがなかなかうまくいきません。

また,支払いをしない業者は多くの人に払っていないため,差押えが競合することがあり,口座にお金が入っていてもほとんど回収できないことが往々にしてあります。
例えば,10万円の債権を持っていて,業者の口座を押さえたところ,20万円が入っていたとします。他に差し押さえた人がいなければ全額回収できます。ところが,別の人も同じ口座を押さえており,しかもその人の債権額が1000万円だったとします。この場合,口座に入っている20万円を10対1000の割合で均等に分けることになるため,実際には2000円程度しかもらえません。強制執行の費用だけで1万円程度の実費がかかるため,完全に赤字です
こうなるともうお手上げです。回収する術がありません。もちろん,強制執行は一度限りではないため,何度も強制執行をすれば回収できるかもしれませんが,時が経つにつれて競合する人がどんどん増えていきますので,なかなかうまくいきません。

ですので,このような場合には,残念ですが低い割合で和解をするということも検討しなければなりません。

随分前の話ですが,アエルという会社があり,今は民事再生をして一律5%しか返還されないこととなっております。このアエルに対して110万円程度の判決を取得しましたが,アエルの状況が悪くなりそうだったので,アエルが倒産する少し前に依頼者の同意を得て100万円で和解し返還してもらったことがあります。
もし,和解していなければ5%まで減額されているので5万円程度しか返還されませんでしたので,和解は大正解でした。
同様に,先日倒産した武富士についても昨年の夏頃に判決を取ったものの8割程度まで減額し,9月上旬に返還してもらったケースがありました。武富士はその後9月下旬に倒産していますので,もし,2週間遅れていたら3.3%まで減額されていたことになります。

今は多くの業者が倒産の危機に瀕しており,特にネオライン系列の業者は今後どのようになるのかさっぱりわかりません。ですので,せっかく判決まで取ったのに減額するのは納得できないというのは,完全に仰るとおりですし,私も腹が立って仕方がありませんが,万が一倒産したときのことを考えると,回収のためにはやむを得ず和解をするという選択肢もあるものと思っています。

ただ,この見極めが大変なんですけどね・・・。
by 8732ki | 2011-12-13 17:10 | 法律のお話し
17条書面と特段の事情についての最高裁判決
12/1に悪意の受益者に関する最高裁判決がありました。

最高裁サイト
判決全文(PDF)

以下,ざっくりですが,この判例について記載します。

------------前提情報----------------------

①みなし弁済

契約書の作成や交付,領収書の作成や交付など,消費者金融が法律に規定されている厳しい条件をすべて満たした場合に限り,高金利を取ってもいいよ,という規定。今は改正で無くなりました。

②悪意の受益者

悪意の受益者というのは,上記のみなし弁済の適用が無いと知りながら借主からの返済を受領し,過払いとなっている場合には,その過払金について返還するのみならず,利息を付けて返還しなさい,というものです。

そして,この悪意の受益者であることの立証責任,つまり,「消費者金融等がみなし弁済の適用が無いことを知っていた」ということを借主側が立証しなければならないのが原則です。
ところが,平成19年に最高裁は「業者側がみなし弁済の適用があると信じてもしょうがない,というような例外的な事情が無い限り,消費者金融等は知っていたでしょ」として,業者側が,その例外的な事情の存在を立証しないかぎり,みなし弁済の適用がないことを知っていた,すなわち,悪意の受益者として利息を支払う義務がある,と判示しました。
----------ここまでが前提---------------


で,今回の訴訟で何が問題になっているかというと,業者側は,「平成17年に最高裁がみなし弁済の条件の一つである借主と契約する際に交付する契約書の内容について厳しい判決を出す前は,その契約書の内容でもいいよ,という裁判例や学説,行政の取扱いがあったのだから,少なくとも平成17年まではみなし弁済の適用があると信じてもしょうがないという事情があり,悪意の受益者ではない,というものです。そして,原審の東京高裁は業者の主張を認めて,悪意の受益者では無いと判示しました。

その上告審が今回の最高裁判決です。

すんごいざっくり言うと,

確かに,そのような内容の契約書でもいいよ,という裁判例や学説等があったのは事実だけども,そのような見解が多数を占めていたとは言えないし,そのような見解が貸金業法の立法関係者によって明確に示されていたものでもないんだから,消費者金融等が信じてもしょうがないよね,という事情ということはできない。だから,悪意の受益者だよね。

というものです。

もっとも,このピンポイントの論点で争われることは多くないため,どこまで影響があるかはわかりません。むしろ,例外的な事情の存在につき,一般的立証(個々の契約書ではなく,会社全体としてそういう体制をとっていた)で足りるという点の方が大きな論点かと思います。

早く解決してくれると楽なんですけどね。
by 8732ki | 2011-12-02 00:00 | 法律のお話し
長年放置しているといろいろ消えちゃいます
ちょうど10年前に完済した分の過払い請求のご依頼をお受けしたため,今日は時効について書いてみたいと思います。



借金や過払金については,ある程度時間が経つと時効によって権利が消滅してしまいます。
借金については支払わなければならなかった日から5年間支払わないと時効により借金は消えてしまい(商法522条),逆に過払金については10年間請求しないと消えてしまいます(民法167条)。

借金を支払わなくなって6年程度経っているので時効を主張するために調査をしてみると,実は過払いになっており,過払いの時効は成立していないため,逆に返ってきたりなんてこともあります。


なぜ時効という制度があるかというと,長年放置していたわけですから,「権利の上に眠るものは保護しない」という考えなどによるものです。



この時効にはいくつか注意点があります。

(1)時効は中断することがあります
5年や10年経つ前に「時効中断事由」が発生すると,そこで期間の計算がストップし,中断事由がなくなってから再度スタートします。
時効中断事由でよく出てくるのが,「請求」と「債務承認」です。

①請求
端的に言えば,訴えてしまうということです。一度訴えてしまえば,裁判をやっている最中に時効の期間が経過したとしても時効は完成しません。
なお,単に口頭で「返して」と言ったり,書面で請求することもできますが,これは時効中断事由としての「請求」ではなく,「催告」(民法153条)になります。
この「催告」をしておくと,その後6か月以内に「請求」をすれば催告のときに時効が中断したことになります。
したがって,上記のとおり,10年ギリギリでお受けした本日のご依頼については,とりあえず催告をしており,準備ができ次第訴訟を提起することになります。

②債務承認
これは,債務者が負債があることを自ら認めることです。この債務承認については請求のように「訴訟をしなければならない」というような決まりはありませんので,口頭で認めても良いですし,書面で認めても構いません。ただし,のちにトラブルになることを防ぐために,専門家が介入している場合は,債務承認に関する書類(例えば,債務承認弁済契約書)を作成し,印鑑をもらっておくと思います。

(2)時効は援用しなければなりません。

5年や10年経過しても,時効の援用をしなければ時効の効力は発生しません。この「援用」というのは,「時効なんで借金の返済はしませんよ」ということを相手に伝えることです。
ですので,5年や10年経っていたとしても,「借りたもんはちゃんと返します!」という方については,返済してもらっても構わないということになります。
ここで重要なのは,5年や10年経過後に援用せずに債務承認をしてしまった場合には,やっぱり「援用します」といって消滅時効を主張することができなくなってしまいます(時効利益の放棄)。

これを利用して業者がカマをかけてきたりします。
例えば,すでに5年経過している場合は,時効の援用さえすれば返済する必要はありません。そこで,業者の方としては,「全額とは言わないから,1000円だけでも払ってもらえませんか?」というような話を持ちかけてきます。ここで1000円くらいならいいか,ということで払ってしまうと,借金の存在を認めて1000円を払ったということになり,その後に時効を援用することができなくなってしまう可能性があります。

たかが1000円払ってしまったことによって何十万円,何百万円という返済をしなければならなくなってしまいます。

(3)ちゃんと時効期間を経過していないと逆に多大な損害金を支払う可能性があります。

消滅時効の期間が経過して援用すれば借金は無くなります。しかし,4年と11ヶ月で時効の援用をしても当然借金は消えません。むしろ,4年11ヶ月は支払っていない訳ですから,ものすごい金額の遅延損害金が付いており,遅延損害金だけで元金の2倍以上になっていることもあります
相手が忘れていたのに,間違えて時効援用通知を送ってしまったことによって,逆に「寝た子を起こす」ことにもなりかねません。
したがって,安易に時効の援用はせずに,専門家としっかり相談のうえ進められた方が良いと思います。



なお,今回は書きませんでしたが,時効には消滅時効の他に取得時効というものもあります。これは,他人の物を勝手に使っていたら,自分の物になってしまうというもので,逆から見れば,自分の物がいつの間にか他人の物になってしまうという恐ろしい制度です。

消滅時効,取得時効のいずれにしても時効が成立(完成)するまでには相当長い期間の経過が必要となりますので,「権利の上に眠る者」にならないようご注意ください。
ちなみに,弁護士や司法書士の報酬については2年で時効になってしまいます。私も「権利の上に眠る者」にならないよう,過去の帳簿を広げてみましょうかね(笑)
by 8732ki | 2011-11-30 14:28 | 法律のお話し
自己破産・個人再生における自動車の取扱い
※今回の内容はあくまで名古屋地裁の取扱いです。他の裁判所では取扱いが異なる可能性が多分にありますのでご注意ください。

珍しく自己破産や個人再生に関する話です。
自己破産等において,自動車を残せるか否かというかなり大きな問題なんですが,ちょいとややこしい話ですので,言葉の説明等も踏まえながら記載していきます。


さて,自己破産を行う場合,不動産や自動車のような高額な財産がある場合は原則として換価(現金化)した上で債権者に分配することとなります。また,個人再生においては財産を換価する必要はありませんが,その財産に相当する額を債権者に支払わなければなりません。

しかし,高額か否かに関係なく,ローンで購入したもの所有権留保が付いたものについては,自己破産においても個人再生においてもローン会社に引き揚げられることになります。

-----------------------------------------------------------------
<所有権留保とは>

所有権留保で一番出てくるのは自動車なので,自動車を前提に説明します。

自動車(普通車)を現金で購入した場合,車検証の「所有者」欄及び「使用者」欄のどちらについても購入された方のお名前が入っていると思います。ところが,信販会社でローンを組んで購入された場合は「所有者」欄には当該信販会社(オリコやアプラス,トヨタファイナンス等)やディーラー等(ネッツトヨタ,ホンダカーズ等)の販売会社の名前が入っており,「使用者」欄には購入された方の名前が入っていることが多いと思います。
これが所有権留保というもので,簡単に言えば,自動車はローンを払い終わるまでは信販会社等の所有物であって,購入者は単に使わせてもらっているに過ぎないということになります。

したがって,のちにローンの支払いが滞った場合には,所有者である信販会社から自動車を返せと言われることになります。

-----------------------------------------------------------------

この所有権留保についてですが,上記の通り「所有者」欄には信販会社の名前が入っていることもあれば販売会社の名前が入っていることがあります。ただ,いずれにしても購入者の名前は入っておりませんので,自己破産や個人再生の申立てを行う場合は,信販会社等に引き揚げられることとなります。

ところが,この点について昨年最高裁が(ざっくり言うと)「信販会社の名義の場合は引き揚げても良いが,販売会社の場合は引き揚げてはならない」という判決を出しました。
判決要旨
判決全文(PDF)

これが本当に大問題なんです。だって,名義がどちらになるかによって,自動車が残せるか取られるか決まるわけですからね。しかも,ディーラーに勤めている知人の何人かに聞いてみたんですが,「所有者」欄が信販会社になるか販売会社になるかは,特段決まりが無いとのことでしたので,たまたま名義が信販会社であれば取られてしまうし,たまたま販売会社になっていれば残せることになり,本当に偶然の産物によって結論が分かれることとなります。

なお,「自動車が取られない」ということはメリットばかりではなく,時としてデメリットになることもあります。
例えば,高額の自動車をローンで購入し,その後に自己破産等の申立てを行う場合,これまでであれば,自動車は引き揚げられているため,簡単な手続である「同時廃止」という比較的簡易な破産手続で進めることができました。しかし,自動車が引き揚げられない場合,一番最初に書いたとおり,自動車を換価しなければなりませんので,その換価の為に「管財事件」という重い破産手続になることが考えられます。もし,管財事件になれば費用は40万円以上余分にかかりますし,時間も年単位でかかってしまいますので,結果としては自動車を残せてしまうことで逆に損をすることになります。


ということで,普通自動車の場合は車検証の所有者欄が誰かによって自動車が残せるか取られるか結論が分かれることとなります。


一方,軽自動車の場合は普通自動車とは結論が異なります。
軽自動車も所有権留保はあるんですが,車検証の名義では判断しないこととなっております(道路運送車両法4条及び5条)。
では,何で判断するのかというと,名古屋地裁では「契約書の記載で判断してください」とのことです。つまり,車検証の所有者欄が誰になっているのかはまったく関係なく,ローンの契約書に「1回でも支払いが遅れた場合には,自動車を信販会社に引き渡します」というような文言が入っていれば,引き渡さなければならないということになります。そして,ほとんどの場合,そのような文言が契約書の中に入っていると思いますので,ローンが残っている軽自動車については,まず間違いなく取られるということになります。

ちなみに,このような取扱いになったのは,ここ最近の話です。
自動車を取られるのか残せるのかというのは申立をする方にとっては重要な事柄なんですが,アナウンスもなく取扱いを変えられると本当に困ります。ということで,私が代わりにアナウンスしてみました。
ただし,最初に記載したとおり,これはあくまで名古屋地裁の話であり,また名古屋地裁の取扱いも完全に固まっている訳ではないとのことでしたので,今後も取扱いが変わる可能性があります。したがって,自己破産等をご検討されている場合は,この点については再度ご依頼される弁護士,司法書士にご確認いただければと思います。
by 8732ki | 2011-11-22 17:27 | 法律のお話し
過払金と税金
過払金が返還された場合に,その過払金に税金がかかるか否かについてご質問を受けることがあります。

以下,一般的なサラリーマンや主婦の方について過払金が返還された場合を前提に記載いたします(事業用ローンによって発生した過払金だと結論が異なります)。

例えば,過払金が130万円返還されたとします。この130万円を過払金を過払金元金と過払金に対する利息に分けて考えます。

過払金元金100万円
上記過払金に対する利息30万円

このうち,元金である100万円部分についてはまったく税金はかかりません。というのは,この100万円については,間違って払ってしまったお金をただ返してもらっただけであって新たに所得が増えた訳ではないからです。
つまり,ご自身のお金を銀行に預け,そのお金を引き出したところで新たな収入があったわけではなく,元からご自身のお金だった訳ですから,これに税金がかけられるなんてことはありません。
なので,100万円だろうが1000万円だろうが1億円だろうが,過払金の元金部分については金額に関係なく税金はかかりません

一方,過払金に悪意の受益者としての利息を付けて返してもらった場合,この利息部分は雑所得となり,他の雑所得と合わせて20万円を超えると申告し納税しなければなりません。
上記の例で言うと,お金を銀行に預けて利子(利息)が付いた場合,その利子については新たな所得ですから,利息部分に税金がかかるというのは当然の話となります(ただし,銀行預金の利子は雑所得ではなく利子所得になります)。
なお,税率は,給与所得等,その他の所得も踏まえて総合的に決まりますので,利子所得のように一律20%というようには決まってはおりません。

これらについては,下記の国税庁のホームページにも記載がございますので,ご覧ください。
返還を受けた利息制限法の制限超過利息(国税庁HP)



では,過払い請求を弁護士や司法書士に依頼した場合の報酬だったり,訴訟をして取り返した場合の訴訟費用等を経費として所得から差し引くことができるのでしょうか。

素直に考えれば,過払金を返してもらうために弁護士等に依頼し,裁判費用を遣っているので経費として差し引けるのではないかと思いましたので税務署に聞きましたが,何とともに経費としては引けないとの回答でした。

そこで,私ではまったく理解できないので,顧問の税理士さんに再度質問し,税務署と打ち合わせをしていただいたところ,弁護士等の報酬については按分した金額については差し引けるが,訴訟費用については差し引けないとの回答でした。

具体的な数字で計算すると,当事務所の場合,過払い報酬は21%ですので,仮に上記のとおり130万円が返還された場合は,130万円×21%=273000円が報酬となります。そして,130万円のうち30万円が利息ですので,273000円×30/130=63000円は経費として差し引けるということになります。
そして,利息は30万円ですので,63000円を差し引いた237000円が雑所得として課税されることになるようです。

一方,訴訟費用については,訴訟自体が過払金元金の返還を主目的にするものであり,また,訴訟費用が元金をベースに計算されていることを理由として差し引けないとのことでした。

中には,元金だけなら返還するけど,利息を請求するなら訴訟してくれという業者もあります。そうすると,税務署の言うように訴訟の主目的が過払金元金という訳ではなく利息部分ということだってあるので,何とも腑に落ちないところもあるのですが,税務署はそのように考えているようです。


以上から,税務署と相談をしたり,また顧問の税理士さんに質問していただいたりして一定の回答は出ておりますが,税務署の方もあまり理解していない感じであり,今後の事例の積み重ねによっては結論が変わる可能性がありますので,最終的にはお近くの税務署にて直接ご確認をお願いいたします。
by 8732ki | 2011-10-27 14:13 | 法律のお話し
ヤミ金の話
「ヤミ金」

ざっくり言えば,貸金業登録をせずに貸金業を営んでいたり,貸金業登録をしていたとしても,法定利率を上回る金利で貸付を行っている人や業者のことを言います。
一昔前は,貸金業登録だけはしているケース(いわゆる「都(1)業者」)もあったかと思いますが,今はほとんど無登録の業者ばかりだと思います。

さて,そんなヤミ金から借りてしまった場合の対処法なんですが,法的には何ら負けることはありませんが,現実的にはかなりやっかいです

まず法的な観点だと,ヤミ金から借りたお金については元金も含めて一切返済しなくても良いことになっています。
その根拠は,民法708条で「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」と規定されているためです。例えば,覚せい剤の売買契約を締結し,代金を支払わなかったとしても,訴えでその代金を請求することはできない,ということになります。だって,覚せい剤の売買自体が犯罪ですからね。そして,ヤミ金業者が貸金業を行うこと(お金を貸すこと)も犯罪ですので,その犯罪行為によってお金を渡したとしてもその返還請求はできないこととなりますし,すでに返済したお金はヤミ金業者より返してもらうこともできます。この理屈は最高裁でも認められています。
最高裁サイト
判決全文(PDF)

ところが,法的にはそうであったとしても,現実的にはなかなかそうも簡単にいきません。だって,もとから法律の枠外を生きている人たちですからね。
もっとも,弁護士や司法書士,警察が入ったことによって,今後の請求をしてこないというケースはかなり多くあります。
先日,1人で20社近くのヤミ金から借り入れされている方のご依頼をお受けし,すべての業者に当事務所から連絡しましたが,ほとんどの業者が以降の連絡はしてこなくなりましたし,残る業者も数日後には連絡してこなくなりました。

ただ,なかなか気合いの入った業者もあり,1ヶ月経っても毎日のように連絡してくる業者もあります。そんな業者に対しては,着信拒否をしてもらったり,銀行の口座凍結の申請をしたりして戦いますが,いくらでも携帯電話を仕入れてきては電話をかけてきますし,銀行口座も次々別の口座を指示してきます。そのような場合はもうただただ耐えるしかありません。完全にガマン比べです。


なお,ヤミ金から借りる際に,ご家族や勤務先等の連絡先を伝えてしまっていると思いますので,当然ご家族等にもご協力をお願いすることになります。
たまに,ご家族に内緒でやりたいという方がいらっしゃいますが,上記の通り,弁護士等が連絡することで止む業者もありますので,そのような場合には内緒でできると思いますが,気合いの入った業者だと内緒で進めるのは難しいと思います。


また,業者に対しての返還請求についてですが,これはもう極めて厳しいです。というのは,返還請求するためには,相手を特定しなければなりませんが,そもそもヤミ金業者は携帯だけの繋がりというのがほとんどですので,相手を特定することができません
なお,口座の凍結が成功し,口座にお金が残っていれば,「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律」により返還されることもありますが,ヤミ金は振り込んだらすぐに口座から引き出してしまうため,現実的にはなかなか難しいと思います。

したがって,結論としては,「返済しないことを告げてあとは耐える」しかありません。

そして,極めて当たり前ですが,「ヤミ金から借りない」ということに尽きます。ヤミ金被害がなくならないということはヤミ金から借りている人がたくさんいるということです。ヤミ金から借りてしまえば,法外な利息を取られ,返済できなければ家族や勤務先にまで嫌がらせをされるんです。場合によっては離婚問題や退職勧告ということにもなりかねないような重大な事態に陥ってしまいます。さらに,大阪ではヤミ金の取立を苦にした心中まで起こっています。
記事
「ほんの数万円」が人生を狂わせるんです。何度も言います。

「ヤミ金から借りないでください!」
by 8732ki | 2011-10-21 16:02 | 法律のお話し
プロミス-クラヴィス問題の最高裁判決
以前記事を書きましたプロミス-クラヴィス(当時はタンポート)の契約切替について最高裁判決が出ました。
最高裁サイト
判決全文(PDF)

ざっくり言うと,「切替はプロミスグループの事業再編によって行われたものであり,その切替もプロミスサイドの勧誘によって行われたものであるから,顧客の合理的意思としては,タンポートの債権のみならず債務もすべて承継したとみるべきだ。」

ということになります。

まぁ,そりゃそうですよね。タンポートと取引していたのに,プロミスの都合で切り替えられていて,その後タンポートがプロミスの子会社じゃなくなったから責任取りませんっていうのはひどい話ですもんね。妥当な判決が出て良かったと思います。

この判決により,あと残っている争点は,体制立証によって善意と認定されるかどうかでしょうか。

この争点に関しては,今回のプロミスのみならず多くの業者が関係していますので,かなりの衝撃があると思います。11月の判断に大注目ですね。
by 8732ki | 2011-10-03 11:35 | 法律のお話し
三和ファイナンスが破産しました
8/26付けで三和ファイナンス(現SFコーポレーション)が破産しました。
記事
プレスリリース(PDF)

今月,三和についての記事を書いておりますので改めて書くことは無いんですが,債権者破産の申立をなりふり構わぬ対応で逃げ切ったのに,今度は自己破産ですから,もうめぼしい資産は残っていないでしょう。
ですので,今後破産手続の中で配当される可能性もゼロではありませんが,仮にあったとしても極めて少ない金額しか返還されないと思います。

ただ,私としては,信じられないくらいのひどい対応の会社だったため,むしろ破産して裁判所の管理下で整理手続を進めてもらえるのは良いことだと思います。

また進展がございましたら記事を書いていきます。
by 8732ki | 2011-08-29 15:06 | 法律のお話し

 

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